平成23年度 食品微生物学実験
担当教官:植野、赤桐 TA:菊田、濱野、古谷、松葉
【内容】
Ⅰ.微生物の顕微鏡観察と染色 Ⅱ.微生物を用いた食品の発酵
Ⅲ.食品中の生菌数測定と大腸菌検査 Ⅳ.酵母の発酵力試験 Ⅴ.遺伝子工学実験 【日程】
水 5月11日 14:40~17:50 講義?掃除 5月11日(水)―7月6日(水) 計17回
木 12日 9:00~12:10 Ⅰ:下準備(A,B培地作り) 13日 9:00~ 金 Ⅱ:下準備(蒸し豆作り、器具滅菌、乳Ⅱ:下準備(BCP培地作り、器具滅菌) 酸菌植菌) 18日14:40~17:50 Ⅰ:植菌(大腸菌、酵母) Ⅱ:植菌(豆、牛乳) 19日9:00~12:10 Ⅰ:菌の観察 20日9:00~ Ⅰ:菌の観察(グラム染色、菌数計測) Ⅱ:納豆とヨーグルトの観察 Ⅲ:下準備(器具滅菌、C培地、BGLB培地作り、EMB培地作り) 25日14:40~17:50 Ⅲ:食品中の菌の培養 26日9:00~12:10 Ⅲ:BGLB培養液の観察 EMB培地への植菌 6月1日 14:40~17:50 Ⅲ:EMB培地の観察 Ⅳ:YPD培地作り 8日 14:40~17:50 Ⅳ:酵母の炭酸ガスの発生量測定 15日14:40~17:50 Ⅴ:器具滅菌、培地作り 22日 29日 14:40~17:50情A② Ⅴ:菌の観察 Ⅵ:遺伝子関連情報検索 7月6日 14:40~17:50情A② Ⅵ:遺伝子関連情報検索(つづき) 1 9日 9:00~12:10 Ⅳ:グルコースの定量 16日 9:00~12:10 Ⅴ:形質転換 2日 9:00~12:10 (予備日) 27日 【目的】
① 食品分野において馴染み深い微生物の基本的な扱い方を習得し、それぞれの特徴を掴む。
② 食品を扱う者にとって、衛生面には細心の注意を払う必要がある。そこで、一般的な食品衛生学的検査
法の一例を学び、習得する。
③ 食品に利用される身近な微生物の代表例であるパン酵母を用い、実際のパン作りに近い環境下におけ
る性質を見る。
④ 近年、様々な分野での応用が期待され、食品分野での応用も考えられる、遺伝子工学の基本的知識、
技術に触れ、理解を深める。
⑤ インターネット上での遺伝子情報の種類およびそれらの情報源についてその概要を理解し,実際に情
報を取得し、解析あるいは、実際の研究に役立つように加工する技術を習得する。
【実験の心得】
① 本実験は、目に見えない微生物や遺伝子などを扱います。空気中に浮遊している多くの微生物やほこり、
塵などによって大切なサンプルが汚染されないよう、常に実験台をきれいに整理し、必ず実験台はもちろん、空間もエタノールで消毒してから実験に取り掛かりましょう。
② 高価な試薬類や機器類も多く使用します。扱い方をしっかりと確認した上で、慎重に無駄のないようよく
考えて、実験を行いましょう。
③ 実験書や実験プリントを熟読し、目的や原理を確認しながら、自分で考え、主体的に実験に取り組みま
しょう。
【実験で使用する主な培地の組成】
A培地(酵母用) (%) C培地(生菌測定用培地) (%) Glucose 1.0 Glucose 0.1 Peptone 1.0 Peptone
0.5 Yeast extract
0.5
Yeast extract
0.25 Tap water (水道水)
Agar
1.5 pH 6.0(+Agar 2.0%) Tap water (水道水)
pH 7.0-7.2 B培地(細菌用) (%)
Peptone 1.0 Yeast extract 0.5 NaCl
1.0
Tap water (水道水)
pH 7.0(+Agar 2.0%)
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Ⅰ.微生物の顕微鏡観察と各種染色(2人1組) 使用微生物 酵母
Saccharomyces cerevisiae パン酵母 Candida lipolytica
細菌
Escherichia coli Bacillus subtilis (natto)
微生物の培養(実験書下巻 p.2-21)
今回は、斜面培養を行う。それぞれの微生物に適した培地(A,B培地)を作成し、培養を行うこと。 細菌は37℃で1日、酵母?カビは28-30℃で1-2日で生育してくる。
【調整操作】
1. 試薬を秤量し,1N HClまたは1N NaOHで培地のpHを調整する.
2. 必要量の寒天を加え,固定斜面培地(スラント) は寒天を湯せんで溶かした後,試験管に5 mlずつ分注する.(試験管の5 mlのところに印をつけると分注しやすい)
3.アルミキャップをした後,アルミ箔で覆い,オートクレーブによって20分間加圧蒸気殺菌する(オートクレーブは,120 °Cに到達した時点で内部は1.2気圧になり,20分間その状態を保持する.その後,徐々に温度を下げる.温度が安全なところまで下がるまで蓋を開けないように!)
4. 固定斜面培地(スラント)は,寒天が固まるまで斜面に静置しておく(図1).斜面培地を凝固した後,直立させると斜面の下部に凝縮水ができるが,これは菌の充分な生育増殖に重要な役目を持つ.シャーレでの固定培地は,寒天の上部に泡ができないように注意する.バーナーであぶると泡は消える.
微生物の観察
?酵母;実験書下巻 p. 36-45
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微生物の観察
?酵母;実験書下巻p.36-45 ?細菌;実験書下巻 p. 84-88
①顕微鏡観察(形態、大きさ、運動性)
細胞の大きさは、ミクロメーターを用いて計測、実験書下巻 p. 41 酵母の細胞数は、血球計算板を用いて計測、実験書下巻 p.37
(注意)血球計算盤は高価なものなので大切に扱い、使用後は直ちに洗浄すること。
②グラム染色 染色 (実験書下巻p.29)
グラム染色: 実験書下巻p.84?86(一般法) 試薬
?crystal violet溶液 crystal violet 0.5 g 蒸留水 100 ml ?Gramヨード液
ヨウ素 1 g ヨウ化カリウム 2 g 蒸留水 300 ml
?Safranin液
2.5% safranin O アルコール溶液 10 ml 蒸留水 10 ml
Ⅱ.微生物を用いた食品の発酵 (台で行う) ?蒸し豆作り
豆を10gずつシャーレに入れ,水を10ml程度加え,オートクレーブにかける。 ?滅菌
乳酸菌用培地(BCP培地)、豆→オートクレーブ滅菌
培地用プレート2枚、ヨーグルト用100mlフラスコ2個→乾熱滅菌 (170℃で1h) ?乳酸菌用培地作り
2台分一緒に作る。 50ml/in 100mlフラスコ→オートクレーブ
ヨーグルトの希釈液を滅菌シャーレに一滴加え、BCP培地を流し入れる。 ?納豆菌と乳酸菌の植菌、培養、その後、経過観察 蒸した豆に納豆菌を接種する。
また、滅菌した三角フラスコに牛乳を入れ、乳酸菌を接種する。
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Ⅲ.食品中の生菌数測定と大腸菌検査 (2人1組) 1日目 <用意するもの> ※以下の物は、すべて 2人分 ?試験管21本
→15本はダラム菅を入れ(下図参照)7mlのBGLB培地を分注してアルミキャップでふたをし、アルミホイルで覆いオートクレーブする。残りの6本はアルミキャップをして乾熱滅菌
?BGLB培地の調製(市販の培地、加熱溶解) ※必ず、ダラム管を入れて、オートクレーブすること! ?100mlフラスコ一個→滅菌生理食塩水 60mlを入れる用、アルミで蓋をして、乾熱滅菌 ?シャーレ13枚(乾熱滅菌)
?ピペット10mlまたは20mlを1本、1mlを2本 ?使用する食品 (入手経路、保存状態を記録。)
手の雑菌が付着するので、できる限り手で触らない。パンのような水分を吸収する食品やヨーグルト飲料など、液体のものは始めから培地が濁り、菌が生育しているかどうかの判断がつきにくいので避けること。また、未開封の缶詰などの微生物がいないと考えられる食品もお勧めしない。 ?生菌数測定用培地(C培地)の作製 2日目 ?食品懸濁液との混釈培養 ?BGLB培地に被検液を接種 3日目 ?EMB寒天培地の調整(滅菌シャーレ1枚/2人) ?BGLB培養液の観察(ガスの発生,色の変化) ?生菌数の測定 4日目 ?推定試験陽性BGLB培養液のEMB培地への接種 ?EMB寒天培地のコロニー観察とグラム染色
食品の生菌数測定と大腸菌検査(食品工学実験書 下、p.447,452) A.平板培養法による生菌数測定
1、アルミキャップ付き滅菌試験管に9mlずつ滅菌生理食塩水を分注する。
2、食品1gを上記の試験管1本に加え、充分撹拌して10倍希釈の食品懸濁液とする。
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ダラム管